星がまだ二粒残っとる空に、山が裾まで全部おった。久しぶりに乾いた朝は、輪郭の線が濃い。
星がまだ二粒残っとる空に、山が裾まで全部おった。久しぶりに乾いた朝は、輪郭の線が濃い。
東の金色が広がって、桃色の小さい雲がぽつぽつ。当たりの日は、始まり方からもう当たりや。
ごはんを前に、視線だけそっと外す待て。我慢がぜんぶ耳に出とる。皿はつるつる。長かったお腹の章が、今日きれいに閉じた。
「怖くて書けない」て言うた人が、練習の紙に四回、封筒に七回、御礼を書いた。最後の一枚のハライは、最初の一枚と別人の線や。怖いもんは七回で手に馴染む。
夕方の道で、逃げん猫に会うた。狼の血ぃ引いとる子のほうが、腰が半分引けとった。
海の上のうろこ雲がぜんぶ桃色に燃えて、右の端を鳥が一羽よぎった。
朝は裾まで見えとった山の上に、月が出た。一つの山が一日に二回主役をやるのは、空気の乾いた日だけや。
夜、「書くで」て張り切ったら、二週間前の自分がもう書き終えとった。家に先客がおった。先客もワイやから、まあ、ええ。